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かすめる

朝から

時折昨夜観た夢が

記憶のどこかをかすめる

かたちにならないまま

浮かんではすぐに消えていく

なにか大事なことだったような

それとも他愛もないことだったのか

 

黄昏時

帰り道に花の香りが鼻先をかすめる

ふうと香り立ってすぐさま掻き消される

梅にしては濃かったような

沈丁花にしては清しいような

 

会わなくなったひとの記憶が

一瞬意識をかすめる

それがあまりに久しぶりで

ああ、ひとは忘れていくことができるのだ

と、心のどこかで安堵する

忘れてしまうことはできないことにも

どこかで少しだけ安堵している