2015-03-04 かすめる 朝から 時折昨夜観た夢が 記憶のどこかをかすめる かたちにならないまま 浮かんではすぐに消えていく なにか大事なことだったような それとも他愛もないことだったのか 黄昏時 帰り道に花の香りが鼻先をかすめる ふうと香り立ってすぐさま掻き消される 梅にしては濃かったような 沈丁花にしては清しいような 会わなくなったひとの記憶が 一瞬意識をかすめる それがあまりに久しぶりで ああ、ひとは忘れていくことができるのだ と、心のどこかで安堵する 忘れてしまうことはできないことにも どこかで少しだけ安堵している