忘れたわけではなくて

昨日は知り合いのボーカリストとギタリストのコンサートだった

知っている曲もあれば初めて聴く曲もあったが

一番記憶に残ったのは

どこか懐かしくどこか落ち着かない気分になる

ちょっとしたフレーズだった

昔聴いたピアノソナタだっただろうか?

それとも映画の中でかかっていた音楽の一部だっただろうか?

なんとなく覚えがあるような気がする

「愛と悲しみのボレロ」をもう一度観返してみようか?

 

同じ日の昼間にはこの間あった中学時代の友人と話をしていた

お互いの記憶をたどるように思い出話をする

昔あなたの高校時代の先輩が亡くなったでしょ?

と、話しかけられて

忘れたことのない人のことながらそれを彼女に話していたことは忘れていて

共通の話題ではないと思い込んでいたものを彼女が覚えていてびっくりした

自分の子どもが亡くなったひとの年頃になって思い出したのよ

あのとき他人事のはずなのにどこかなにか不安を感じて忘れていなかったの

もしそんなことが起こったらどれだけ親は苦しむのだろうと・・

 

忘れるわけじゃないんだよね

気になることは溶けることもなく

しらず心の奥深く底の方へ沈み込んでいく

そして

なにかのはずみに

かき回された水の底から浮かび上がるように

不意に心のおもてにあらわれる

きっと忘れたつもりでも

底に沈んでそのままになっていることもあるんだろうね

 

ああ・・

あの曲のなかの記憶の底にあるものも

名前をつけるとすれば「不安」だったかもしれない

知っているはずなのに思い出せない

思い出したいのかそうではないのか

それすらも分からない

それでも忘れてはいけない気がするそんなもの

 

その正体が何なのか

それは薄々感じている

でも言葉にしていいのかどうか戸惑っている

言葉にするとそれがそれでなくなる気もして

だから不安でもあり

消えることもないのかもしれない