夢に流す
過去を水に流すというのは
すべてをなかったことにして許すというわけではないのだ
受けたことは消えないし
消えないことは忘れることはできない
それでも
それは少しずつ形を変え意味を変えていく
変わらないねという
なにも知らないあなた
それは可哀想にと
誰も気づかないことに気づくあなた
そうなのだ
わからないことはわからないし
誰よりも見ていてくれたことは確か
それが好きだったことでもあるし嫌いだったことでもある
何も変わっていなくてもあの頃のわたしではないのよ
きっとあなたもあの頃のあなたではないように
いろんなことが一度にあった一日の後の夢には
いろいろなことが詰め込まれ過ぎて
夜中に押しつぶされそうになって何度か起きてしまった
そうか
遠い昔のあんな想いも
きっとそうやってすこしずつ夢に流していったんだね
懐かしさとは少し違う苦い甘さに彩られながら
ときおり川面に姿を見せるちいさな鱗のような記憶