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おわりは はじまり

知り合って30年も経つのに

誕生日のプレゼントなにがいい?なんて聞いたのは初めてだった

ウクレレ

そうはっきり言われたのもある意味予想外

ピンからキリまである楽器屋でかなり悩みぬいて

無理しない程度にでもかなり気合入れて買って贈ったのがおととしの夏

そのウクレレが出戻ってきたいやもとい形見分けで私のもとへやってきた

願いを込めて、ギター復帰して要らなくなったらもらうからって言ってたのがね

丁寧に使われて新品の時より艶を増してみえた

今日奥様の待つ彼の家へお参りに行く予定にしていたその前夜

すなわち今朝起きて覚えていた夢に彼が出てきた

ギターを演奏する彼を凄い形相でにらむ女の子が見えた

彼がいなくなったことが許せないと怒っているように見えた

そして夢のなかで、あんな顔をする気持ちは分かるけど

あんな顔をしたくはないと強く強く思っていた

あの女の子は誰だったんだろう

 

お参りを終えて外に出たら少し泣けた

もしかすると笑顔を見せてくれてた奥様も少し泣いたのかもしれない

笑顔も涙もどちらもつくりものでも嘘でもない

表と裏はどちらもおなじくらい強い力でバランスをとっている

きっと私以上にあのひとは・・と思うとまた帰って泣けた

 

ひとはひとりでは生きていけない

でもひとりでも生きていく覚悟がないとやっていけない

ウクレレでコードを押さえながら

そうだね

これからは自分で音を出して歌ってみるよとつぶやく

ギターを弾いてくれるひとがいなくなって

もう歌わないかもしれないと思った少し前の自分

諦めることは捨てることではなく区切りをつけること

もらったこころはそのままにそのときどきのかたちで奏でる

別れはおわりかもしれないけれど

おわりはまたはじまり

春がはじまるこの時季

そんな決心をするのにとても相応しい