夜に
こんな夜に
ページを開けたままで
書きあぐねている時は
少しだけ人恋しい時だ
庭の片隅で紫陽花が色を変えはじめている
久しぶりに裏山へ散歩に出かけた
飛行機の音もかき消すほどの蝉時雨
ひらり舞うクロアゲハ
群れ成す赤とんぼ
ひとり飛ぶ青く光るトンボ
いきなり現れたカブトムシ
枝で息をひそめるカラス
久しぶりにマスクもせずに坂道を登った
すこしだけ深い息ができた
夏はあちこちの世界の境目が薄くなる気がする
なつかしいひとに会いたい
そう、その人を想うとき
かのひとは夢に現れて微笑んでくれるのだろうか