同じ月を見ている
話す言葉の柔らかさが変わってきたり
名前の呼び方が変わってきたり
そんなことでふたりの間の距離が変わったことを知る頃
あ~そうか、若い頃
すこし年上とよりすこし年下とのほうが上手くいったのは
なかなか敬語から抜け出せない私が変わるより
相手が変わっていくのに気づくほうが楽だったからかなあ
自分に自信も持てずただ臆病だったあの頃は
かたちになった見えるものしか気づくことができなかった
同じ街角同じ海同じ桜に同じ月
それでもそのときそのときに違う気持ちで眺める
出会いも別れもそして新しい恋心を持った時にも
忘れることも忘れられないことも
自分の中のどこかに持って抱えて溶かし込んで
濁ったり澄んだりする心の中で一瞬ピントを合わせるように
思い出したりときめいたりときには涙したりするのだろう
「月がきれい」と話しながら
いくつもの月を思い出す
それは偽りでも不実でもなく
ただ正直なわたしのこころ
久しぶりに
恋の始まる場面など読んでたら
胸がキュンキュンしちゃいましたよ
好きだなあ~吉田秋生