映画館で「荒野に希望の灯をともす」を観る

 

思えばあれは日本でのラグビーワールドカップが終わって間もなく

中村哲さんが凶弾に倒れたと聞いてなんだか世界が真っ暗になる気がして

それくらい彼はわたしにとって平和を具現するような存在で

年が明ければ新型ウイルスのある世界になって

ずっと心のどこかがふさぎ込んでいたような気がする

特にこの夏は暑さと仕事の何やかやとでいつにも増して運動不足で

この年になって二週間も動かないでいるとそれはもう

健康に支障をきたすくらいのダメージで

映画館で二時間以上じっとしているなんてもうできないかも・・

と思うくらいだったのだけれど、どうしてもこれだけは・・と

こんなささやかな外出だというのに緊張しつつ出かけてきたのだった

 

始まるとすぐに胸をつかまれて何度も何度も涙が溢れてきて

今まで知っていたことも鮮やかに印象を新しくするし

知らないこともいっぱいあったしずっとスクリーンにくぎ付けだった

 

憲法九条がなくなったら僕は日本を捨てる」というようなことを

中村哲さんの言葉のなかで一番印象にのこしていたのだけれど

今回は「人間も自然のなかの生物のひとつ」

「自然の恵みをほんの少しわけてもらうだけ」

そんな言葉がとても印象に残った

知ってしまったから、誰かがやってくれれば自分でなくてもいいけど

ほおって行くわけにはいかないから今ここでこうやってやっている

そういって長いこと現地に残り

抗生物質で病気を治してもそれはその場しのぎにしかならない

きれいな水を得て、食べ物を自らで作ることができなければ、

そう言って井戸を掘り、用水路を掘り、畑へと水を導く・・

 

どうやって生きていくべきか痛烈に考えさせられる

今いる場所で何をすべきか

必要なものと欲を出したものとの境目はどこなのか

いままでぼんやりと考えていたことを

その考え方でいまいちどふるいにかけたり

中村哲さんというひとの生き方につながる生き方というものは

どういうものなのか、どういうひとなのか、などと

とりとめもなく、しかし、どこかはっきりと

生きていくうえでのそれこそ灯火をもらったような気がする

 

彼が亡くなられたときすべては終わってしまったように思えたけれど

彼が始めたことは受け継がれ続いている

そして映画を見たたくさんのひとが心に何かを残している

それは平和を求めるこころの種のようでもある

 

いつか紛争が終わりあの用水路を世界中の人が見に行けるようになればいい

と、Twitterでつぶやいていたひとがいた

ああ、本当にそうだなあと思った

アフガニスタンにマルワリード用水路を見に行きたいから

世界平和を実現させたい!そんな望み方だっていいんじゃないかとさえ思えた

 

砂漠に緑が茂るように

ひとびとの心がゆったりと潤いとやさしさに満たされますように